もうすぐ9月が終わる。天気はその年によって変わるから意識はしないけど、僕が1年の中でいちばん季節が変わる気分になるのは9月に入るころのような気がする。食材でもこの時期になると水っぽいものが少なくなるし、香りや匂いからだけでもお皿にのる料理が楽しみになるものがいろいろと出てくる。そういえばフランスでは牡蠣が美味しいのは月の綴りにRが入っている期間といわれる。
9月に入ると披露宴も多くなる。僕も今月は小中学校の同級生の結婚式に呼んでもらった。先月あたりから仕事ばかりしていたから直前まで行けるかどうかはわからなかった。でも直前まで周りの友達が細かく何度も連絡をくれていたし僕も最初から行きたかった。人を集めることは大変なこと。ただ行くだけになってしまうけどせっかくだから僕はそんなときは何も手伝わない。
これは9月とは関係ないけど、今月は周りに不幸も多かった。それが理由で数日お店を営業できなかった。急に上手な言葉で案内を書くのは難しいこともある。ご心配とご迷惑があったけど、スタッフが同じ気持ちで休むのならまた別のときにいい料理とサービスを用意できるんじゃないかと思う。
僕の行った結婚式には前日にお父さんの告別式があった同級生も来てくれていた。正直会えるとは思わなかった。ビンゴの番号を明るく読んでいるいつもどおりの彼の律儀な幹事姿を見ると「仕事が忙しいから」なんて絶対に言おうと思わなくなる。行かないつもりだったのにその日の夜は久しぶりに地元に寄った。気がつくとお腹が空いていたから居酒屋では最初にお茶漬けを頼んだ。こういう幸せな時間の後に自分がどういう仕事ができるか、僕はけっこう楽しみになる。
同じ週には以前働いていたホテルに行く機会があった。友達のいるバーに久しぶりに寄らせてもらった。毎日一緒に汗をかいて長い時間動き回っていたときからもう10年くらいになる。彼がまだそこにいるから僕がここに来ることができる。相変わらず完璧な身なりで今の僕とは全然違う。リクエストして作ってもらったカルヴァドスのカクテルが素晴らしかった。僕はどうしてもカルヴァドスは料理的に、料理寄りに扱うことが多いから、純粋な作品を見せてもらった感じがした。混ぜて振っているのにカルヴァドスの風味が損なわれていなかったし、むしろ特徴が際立っていた。ストレートで飲むよりもカルヴァドスの味を感じることができた。お酒の種類によってはそれは本当に難しい。だけど閉店間際に少し酔っている一人の男性客が入ってきて、彼はまったく難しくないことを丁寧に話してあげていた。ホテルの看板を利用して適当に接客することもできるのに。結局大して僕と変わらないかなと思った。
一緒にいた仲間と離れるのはいつも寂しかったけど、それは真剣に何かをやっていたときにしか思えない。また何か一緒にやれるときが楽しみ。帰り道にそう思えるようでいたい。