夏になる前に目黒にある映画館に「ビフォア・サンセット」を観に行った。もう恵比寿での上映は終わっていた。名画座と呼ばれる映画館にはよく通ったけど、ここは僕は初めてだった。ジャン・ピエール・ジュネの作品との二本立てだった。
映画館のイメージというのはけっこう強い。映画であっても小屋に魅力があるのが理由で行くひとは少なくない。イーサン・ホークを見て、恵比寿の映画館のイメージを重ねるひとも少なくない気がする。
あとは日本で観るのなら邦題も大切なものなのかもしれない。「フィールド・オブ・ドリームス」が「とうもろこし畑のキャッチボール」だったらビデオの置かれる位置が変わってしまう。ずっと「ビフォア・サンライズ」では探すことができなかった。
9年前に「恋人までの距離(ディスタンス)」を観に行ったいちばんの理由は、ジュリー・デルピーが出演しているからだった。「ビフォア・サンセット」という続編が出来ることを知ってから、リチャード・リンクレイターという監督を意識することになった。この監督はたくさんの分野で評価されていい。
でも、僕には「ビフォア・サンセット」はジュリー・デルピーの作品に見えた。英語で話しているのに、最近のフランス映画よりもずっとフランス映画っぽく見えた。セーヌ川の観光船に乗っている姿が似合わないのに似合う。パリの町並がセリーヌとジェシーの会話に溶け込んでいた。
一度しか観ていないから色んな台詞は覚えていない。ずっと自然な映画だった。セリーヌがジェシーのフランス語を褒める場面は、映画の一場面のような感じがしなかった。ぜいたくなフィクションは楽しい。そして、セリーヌが一度だけジェシーを抱きしめる姿は美しかった。
物語の終わりを予想できなかった。目の前を急に真っ暗にされるような、一瞬だけ昔のフランス映画を観ているような気もした。でも、セリーヌの歌うワルツのあとに、エンドクレジットで用意されていた曲は「je t'aime tant」。これを聴いて今の映画なんだと思った。ジュリー・デルピーが最後に曖昧ではない気持ちを込めていた。
「ビフォア・サンセット」は今まで観たことのない作品だった。映画ではなくても、こういうふうに続編を作っていけるようにしたい。