毎年開催されるFOODEX(国際食品・飲料展)にはたくさんのひとが足を運ぶ。建前とは違う目的で来るひとも多い。だから出展する側は大変だろうけど、きっとそれはこの分野に魅力を感じている人間が多いということでもある。
2000年の12月に幕張に日本での1号店を出店した「Carrefour」が、日本から撤退することが発表されたのは、FOODEXで幕張メッセにひとが溢れているときだった。風通しのいい街だから、幕張メッセから「Carrefour」までは歩くなら意外に距離がある。
フランスで初めて「Carrefour」に行ったときは、自分の住む町に「Carrefour」があってよかったと思った。それまで勉強の対象のように付き合ってきたものが日常の中に用意されていた。クッキーでもソーセージでも、不安になるくらいに安いものから嫌みなほどに高いものがある。いろいろ試すことができるのは楽しかった。高級なものはどの国にもある。フランスには特にあるかもしれない。でもそうではない部分の質や種類の多さにもフランスの凄さは詰まっている。
ここは日本なのだから同じものをそのまま持ってくることができないのはわかる。日本の小売業者は日本の消費者は特別だとよく言う。でもその前に日本の流通の仕組みが特別すぎる。「SEPHORA」は「Carrefour」よりも滞在期間が短かった。ビジネスだったのだから、負けたからかわいそうということじゃない。ただ「Carrefour」の撤退のニュースを聞いて喜んだりほっとしたのは、たぶん消費者の側ではなかった。きれいごとは削って価格だけで考えたっていい。イペルマルシェと日本のスーパーと、消費者のためにボンマルシェを目指したのはどちらだろう。
語学学校に通い始めたばかりのころ、昨日どこに行ったかをみんなで順番に言う授業があって、僕は「Carrefour」に行ったと言った。先生は変な顔をして、それは誰でも行くでしょと言った。買い物をしたと言ったらわかってくれたみたいで、先生は教室を出て「Carrefour」のビニールの袋を持ってきてくれた。そしてロゴマークを指して、何に見える?と訊かれた。わからなくてcarrefourを辞書でひいてみたら、交差点と書いてあった。
でもそこで質問は終わらなくて、もうひとつ何が見えるかと訊かれた。「Carrefour」のロゴマークにはふたつの記号が交ざっている。ひとつを強く意識してしまうともうひとつが見えないこともある。もちろんどちらも見えないこともあるけれど。