言葉がわからなくても聴いてみたくなる音楽がたまにある。フランスでラジオを聴き始めたときは、していないようでしている曲紹介を聞き取ることができなかった。初めは何をわかるのにも時間がかかる。そのときはメロディーときっとそう言っているはずの歌詞で曲を記憶するだけだった。
「le temps, c'est de l'amour」と歌っている曲があった。ゆっくり歌う曲だから耳も口も慣れていなかった僕にも少しだけ聞き取ることができる曲だった。パスカル・オビスポが歌っていることもわかった。その部分がきっと曲名だと思って、ニースのfnacで何回か探したけど見つけることができなかった。本当の曲名が「lucie」と知ったのはそれから半年くらい後で、通っていた語学学校の授業でだった。先生の好きな歌という理由だった。
フランスのラジオはたまに聴いてもかかっている曲がほとんど変わっていない。何年も変わっていない局もある。売れているCDの順位を見るのは週ごとではなくて3か月くらいごとでもそんなに遅くない。
オビスポがすべての音楽を作った「les dix commandements」の公演は2000年の秋から始まった。そのかなり前から宣伝は始まっていた。東京の生活に当てはめたら、公演が始まるときには話題にならなくなっているんじゃないかと思った。フランス人はどういうひとがどこで物事を計算しているんだろう。
このコメディー・ミュージカルを僕は観なかった。そのときの僕は「ロミオとジュリエット」に行きたかった。タイトルを「十戒」と訳せることは日本に帰ってきてから知ったし、十戒の物語は今でも知らない。それでもオビスポの書いた14の曲からはずいぶん想像できることがある。いつかどこかで観れたらいい。
「lucie」が入っているオビスポのアルバムには「il faut du temps」という曲もある。芝居なら新しいとか先が読めないとかではなくて、お話を判っているほうが楽しめることもある。聞こえる音楽も違ってくる。時間を愛にするのはさすがに難しいけど、面白い物語にはやっぱり時間が積み重ねられている。