ご飯を食べているときにその日に観てきたことについて話をしているお客さんはけっこう多い。映画や演劇であるとかスポーツとか。それが楽しいものであったかどうかは表情からだけでもすこしはわかる。
すこし前に総合格闘技の大会があって僕も数日後のテレビ放送を観た。
10代のときはよくプロレスを観に行った。いまではテレビでも観なくなってしまったけど別に嫌いになったわけじゃない。でも今回観たような格闘技は僕はきっと好きになることはない。
それはわかっていたけどそれでも観ようと思ったのは小川直也というプロレスラーが試合をするからだった。固有名詞で通用するような人間が自分のことをプロレスラーだと言っている。アマチュアの世界でメダルを取った人間がいつもそう言っているのだからかなり意味があるんだろう。
真剣勝負とかガチンコとかそんな言葉を聞くときがけっこうある。そしてプロレスはそうではないと言うひともきっと多い。そんなことを真剣に言うひとたちはきっと真面目なんだろう。みんな何が見たいんだろう。真剣勝負と言ったって路上の喧嘩をお金を払って見たいひとなんてそんなにいないはずだ。
テレビでは小川の試合がいちばん最後に放送されていた。だから必然的に放送時間のすべてを観てしまった。でも面白かった。お客さんの顔も楽しそうなひとが多そうだった。小川はプロとはどういうものであるかを見せたくてしょうがなかった。お金を払って来てもらっているお客さんに楽しんでもらうことだけを考えていた。自分の引き出しはしまっておいてもいい。プロであるかどうかは周りのひとが教えてくれる。